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天皇のお歌。



百人一首の第1番は、いきなり天皇の歌からスタートします。皆さんが百人一首を覚える時、よほどのヒネクレ者でない限り、この1番の歌から覚えるでしょうから、お馴染みの一首ですね。
さてこの天智天皇ですが、「中大兄皇子」と言えばピンとくるでしょうか。 そう、中臣鎌足などと共に蘇我氏を滅ぼし、虫殺す大化の改新を行った大革命様なのであります。
そんな天智天皇ですが、この一句は自らが天皇という位にありながら農民たちの気持ちになって読み上げた、心温まる一品です。

「秋の田のかり穂の庵の苫をあらみ 我が衣手は露にぬれつつ」

「庵」は、粗末な小屋のことを指します。「苫をあらみ」は、目の粗い様子をイメージします。
「秋の稲刈りの季節。刈った稲穂で作った見張り用の粗末な小屋は目が粗いので、夜になると着物の袖がぐっしょりと濡れてくるよ。」といった意味になります。
天智天皇に小屋で夜を明かした経験があるのかどうかはわかりませんが、なかなかの視野の広さを感じます。ちなみに、競技かるた大会などでは「我が衣手に雪は降りつつ」と混同しやすいので、気をつけましょう。

次は、持統天皇です。持統天皇は、さきほどの天智天皇のご令嬢です。そう、持統天皇は、女帝なのです。
都を藤原京(今の奈良県橿原市のあたり)に移した持統天皇がある日、山の中腹に白い物体を発見しました。「これ、そこの者、あれは何じゃ?」と側近にお尋ねになりましたが、その時に詠んだのが次の一句です。

「春過ぎて夏来にけらし白妙の 衣干すてふ天の香具山」

「天の香具山に白い衣が干されているのを見ると、春が過ぎて夏がやってくるのだなあと感じますよ。」といった意味です。この地方では、夏が来る頃に白い衣類を一斉に山に干す習慣があったそうです。
ところでこの歌にはもう一つ「夏が来たら干す白い衣のように、白い雪が天の香具山につもっているよ。」といった解釈もあります。ちょっと強引な感じもしますけど、どうなのでしょうか。