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福岡宮崎



阪神ファンですが、何か?

最近の筆者といったら、どちらかというと北海道・東北といった北国に凝ってしまっていて、南国はとんとご無沙汰であった(社長の陰謀によるグアムは除く)。しかし、2年に一度ぐらい発症する「長浜ラーメン欠乏症」が出始めたことに加え、受付嬢うのっちが上目使いに「カープの宮崎キャンプ見たいけど、さすがに行けないなぁ。あ~、誰か写真撮ったりサインもらったりしてきてくれないかな~」と暗黙の命令を下してくださったことにより、久しぶりに九州を訪れることに決定した。ちょうど代休が1日あったので、土日にひっつけて3連休とし、早速行き帰りの飛行機を手配。大型連休であれば寝台特急などで行く手もあるが、3連休ではさすがに効率の良い交通手段を選びたいところだ。レンタカーを使うかどうかで悩んだが、うのっちが「福岡から宮崎まで行く『ドリームにちりん』という夜行列車があるらしいよ?」と調べてくださり(悩んでいる内容がなんでわかったんだろ)、行きは福岡入り、列車で移動して宮崎から帰る計画に落ち着いた。
広島カープのキャンプは宮崎県の日南市で行われている。うのっちが仕事中に作成したあんちょこによると、投手陣は日南シーズンホテル、野手は日南第一ホテルを宿舎としているようで、キャンプ期間中はおそらくホテル全体が貸切状態で、一般客は泊まれないことが予想された。しかし、ダメもとで電話してみると「空いてますよ~」と言われ、野手組の日南第一ホテルの予約にあっさり成功してしまった。ホントに良いのか?おそるべき市民球団、広島カープである(もちろん巨人や西武の宿舎は一般客立ち入り禁止で、厳戒体制が敷かれるらしい)。
前日には当然のようにうのっちから色紙5枚とサインペン、さらに2004年版選手名鑑まで手渡され、選手の背番号と顔と好きなタレント(何かに役立つかもしれん)を徹夜で覚えて旅に備えるのだった。

まずは福岡観光開始!

2月21日(土)。6時半羽田発の飛行機に向け、4時に起床して準備開始。始発の相鉄に乗り、横浜からは羽田空港行きの快特が出ていた。うのっちにもらったてるてる坊主が効いたのか、この日は素晴らしい天気。残念ながら窓際の席は取れなかったが、福岡行きの全日空機は定刻に羽田を飛び立った。8時過ぎに福岡空港に到着、およそ1年半ぶりの九州上陸を果たす。宮崎に重点を置いていたせいか、福岡での過ごし方はあまり考えておらず、とりあえず腹も減ったことだし、朝からやっているであろう一蘭を目指して地下鉄に乗った。
博多駅までは5分ほど。地下街の端っこの方にある一蘭へ行くと、なんと!普通は24時間営業のこの店だが、ここの店舗はなぜか10時かららしく、光の灯っていないちょうちんが静かにぶらさがっているだけであった。泣きながら地上に出ると、「駅一番」というラーメン屋が隣の吉野家と張り合うように24時間営業でやっていたので、早速入店。メニューを見ると「ラーメン500円」と書いてあって、その隣に「ラーメン定食500円」と書いてあった。なぜ普通のラーメンとゴハン付の定食が同じ値段なのか謎だが、ラーメン以外で腹を満たしたくない筆者は迷わず普通のラーメンを注文。ここのラーメンは不味くはなかったが、高級寿がきやのような味であった。博多まで来たからにはもう少しこってり感が欲しい(朝からこってり感を所望する人間も珍しいが)。
チケットが入手できずにホゾを噛んだ去年の日本シリーズだが、日本一の栄誉を称え、ダイエーホークスの本拠地である福岡ドームを見に行くことにした。福岡ドームでは毎日1時間毎に「バックステージツアー」というのをやっているらしく、普段は見られない裏方の現場などをドームギャル?が説明してくれるようで、それに参加してみようと思ったのだ。地下鉄「唐人町(とうじんまち)」の駅を降り、ドームまでは徒歩15分ほど。それにしても、ドーム方面に歩く人の多いこと。シーズンオフなのにおかしいな~と思って進んでいると、なぜかダフ屋風の人々が「チケット1,500円だよー」とダミ声でやっているではないか。入り口のポスターを見ると「チューニングカーの祭典!オートモーターショウ」というイベントが開催中らしく、人の列は皆それ目当てなのであった。このイベントのせいでこの日は珍しくバックステージツアーが中止らしく、全くツイていない筆者である。入場料は2,000円。ドームには入りたいが、興味も無いのに2,000円はバカバカしい(ダフ屋風がなぜ原価割れで売りサバいているのかは謎だ)。「まあ、今年の日本シリーズでまた来ればいいや」と、諦めの早い筆者であった(二度と来れなかったりして)。
気を取り直して、ドームから海の方に歩ったところにある「シーサイドももち」という公園へ行ってみた。ここは公園というよりは見渡す限りの砂浜で、まだ春前ということもあって人はまばら。この日は本当に良い天気で、気温も上がってきた。犬が海に入って泳いでおり、大変羨ましい。レストランやお土産屋が夏に向けて改装中で、いたるところで工事が行われるいる。
お土産屋の奥から高速船が出ているようで、それに乗ってみることにした。乗客は10人ほどだが、外で風に当たっていこうという風流な輩は筆者だけ。皆の衆、船の楽しみ方というものをわかってないようである(毎日乗ってる地元の人かもしれんけど)。高速船ということで、船(というよりボート)はぐんぐん進む。福岡ドームもあっという間に小さくなっていった。15分ほどで、向こう岸の「海ノ中道」に到着した。海ノ中道は、名前のとおり「海の中に道がある」公園で、観覧車やジェットコースターなどの遊具・花畑・サイクリング遊歩道などがある総合レジャー施設だ。入り口にはヤシの木が立ち並び、南国気分満点である。
まだ季節が早いこともあって花などはちらほら程度だし、入場者もまばら。芝生のだだっ広い公園では、犬が主人の打ったボールを走ってくわえて取ってくるという定番の風景が繰り広げられている。その主人がまた打つのがえらいヘタクソで、ボテボテのゴロばかりで犬もつまらなそうであった(筆者に打たせろ!くわえる方でもいいけど!)。見ていたら眠くなり、芝生の上で大の字になって寝ることにした。たまにはこういうのんびり旅も良いものである。 「暑っつぅ~」といって目が覚めた。良い天気に慣れていないので、体が異常を感じ取ったようである。園内をてくてく歩いてみることにした。バラ園があるようなので期待して行ってみたが、さすがにまだ早いようで、一輪たりとも咲いてはいなかった。何もしていない割には腹が減ってきたので、公園を後にし、JRの駅へと歩っていった。15分ほど歩くと、JR香椎線の終点駅「西戸崎駅」があった。単線のしがないローカル列車が両側を海で挟まれた細い半島をのこのこ進み、なかなか良い感じだ。香椎駅で鹿児島本線に乗り換え、博多駅へと戻った。
昼ラをどこで食すか迷ったが、ここはひとつ行列覚悟で一風堂の本店でも行ってみようと思い、地下鉄で天神まで移動。そこから歩って10分ほど行くと、行列の出来ているラーメン屋があり、「一風堂」と大きな看板がかかっていたので、その列に並ぶことにした。しかし数分後、ある異変に気が付いた。張り紙に「一風堂西通り店」と書いてあるではないか。筆者が目指していたのは「大名本店」である。地図を見ると確かにこの辺りなのだが、違うのだろうか。空腹時に列を離れて失敗すると痛恨だが、ここはあえて本店が存在するのを信じて再度歩き始めた。するとなんと!100mぐらい離れたところに大名本店が存在し、5人ぐらい並んでいた。まぎらわしい。観光客の中には西通り店を本店と間違ったまま満足して帰って行った人も多いのではないだろうか。別に本店だろうと西通り店だろうとそんなに味は違わないと思うが、なんとなく「本店で食べた」というのが本人にとっての誇りであり、「やっぱり甲子園で見なきゃね」というのに似ている。しかも一風堂の場合、本店にしかないメニュー「かさね味」というものが存在するため、何がなんでも本店で食べたいというのが乙女心である。客の9割が注文するというその「かさね味」を筆者も注文。さすがは本店の名に恥じぬ旨さであった。赤丸よりもコクがある感じだ。

長浜屋台を満喫!

博多や長浜の屋台が始まるのはだいたい18:30頃。それまではまだだいぶ時間があるのでもう1軒ハシゴしようと思ったが、目当ての店が探しても見付からず(移転したかしら)、仕方なく古本屋や岩田屋で時間を潰し、頃合いを見計らって長浜に向かって歩き出した。今回は長浜屋台の一番奥、「やまちゃん」に行ってみた。まだ準備の最中のようだったが、「座っとってええで」ということで、しばらく座って待つ。ビールもまだ冷えていないようだったのだが、店のおっちゃんが隣の屋台から1本拝借してきてくれて、ありがたく1杯いただくこととなった(ちゃんと1本返したかしら)。
店のにいちゃんの話によると、屋台は毎日組み立てと撤収を繰り返すらしく、結構大変な作業だということだった。「大きなプラモデルやね」と言いながら作業をするにいちゃんは、テレビでたまに見かける小さい清原に似ている(本物の清原には似ていない)。
しばらくすると、カップル風味が隣に座ってきた。どうやら地元の方々のようで、店の人とも気軽に話していたが、その内筆者も輪に加わって話に花を咲かせるようになった。カップル風味は両者とも30歳ということだったが、どう見ても筆者の方が10歳ぐらい若い感じだ。
男は昔宮崎で働いていたようで、「明日どこ行くんですか?へー、宮崎ですか。宮崎は釜揚げうどんがめちゃくちゃ旨いですよ。長島監督も通ったみたいですが、本当はその店の近所の店が旨いんです」と、かなり事情通のようである。長浜についてももちろん事情通で「この店を選んだのは正解ですよ。ここが一番ラーメンが旨いんです」とのこと。まあ多少の主観は入っていようが、そう言われればこちらとしても悪い気はしない。そういえばラーメンを食べに来たのだが、男女に「モツ煮込みや焼き鳥も旨いですよ」とそそのかされ、店のリトル清原にも「ラーメンはデザートですたい!」と言われ、結局最後に1杯食べたらおなか一杯になってしまった。
この日のラーメンはこれで終了。目標は5杯だったので、実績3杯は達成率6割だが、まあ店員や客との触れ合いも旅の醍醐味なので、これで良しだ。
さてその男女、「時間があるなら風呂でも入って行った方がいいですよ。車で送りますから乗ってください」と言い出し、飲酒運転違反者に拉致されて港の「博多一番風呂」に連れて行かれ、降ろされた。強引な人たちではあったが、なかなか楽しめたから良しとしよう。さてこの銭湯、全国選りすぐりの温泉が3種類あり(本物?)、露天もあってまあまあ面白い。値段は800円と少し割高だが、これだけの規模なら仕方あるまい。さっぱりわけのわからない場所に連れてこられたが、地図によると博多駅まで2kmぐらいらしい。ドリームにちりんまではまだ時間があるので、歩って博多駅を目指す。珍しく道に迷わず到着し、列車の到着を待った。

寝台列車で日南へ!

駅のホームにもラーメン屋があったが、腹一杯すぎて眠れないと困るので我慢し、22:50発のドリームにちりんに乗り込んだ。指定席を取ってあったので座ってウトウトしていると、どっかのおっさんがウロウロやってきて、「あのー、そこ私の席だと思うのですが、指定席券見せてもらって良いですか?」と言ってきた。慎重派で知られる筆者、何度も席を確認したので間違っているはずはなく、自信満々で券を見せた。たいがいの場合は相手の券を見て「あっ、それあっちですよ」と教えてやるのだが、今回は違った。相手の券の席も合っていたのである。嫌な汗が出た。相手の券は21日、自分のは22日だった。そして今日は間違いなく21日だ。やっちまった!券を買った後に「ニャンニャンニャンの日だー」とつぶやいた記憶がある。完全に自分のせいだ。そのおっさんは素人らしく、筆者が「あっ」と思った時にはウロウロとどこかへ行ってしまっていた。さすがにそのまま居座るわけにもいかず、自由席に移動してまんじりとも出来ぬ夜を過ごすのであった。
明るくなってきた頃、宮崎駅に到着。そのまま日南線のローカル列車に乗り換え、カープのキャンプ地である天福球場の最寄り駅「油津(あぶらつ)駅」を目指す。指定席間違え事件から開放されてさすがに眠くなり、気が付いたらもう油津駅だった。この日の予報は雨だが、今のところ大丈夫である。
駅から天福球場は歩って5分。練習開始は10時で今はまだ8時過ぎだが、ファンと見られる親子が何人かウロウロしている。その内、赤い帽子を被った選手とおぼしき人たちがタクシーで来るようになったが、なぜか球場の入り口をスルーして坂を上って行ってしまう。どうやらそっちの方に屋内練習場があるらしく、天気がビミョーなのでそちらに集まっているようであった。急いで坂を上ると知らない選手が既に何人か来ており、そろそろ大物選手の登場を予感させたが、来るのは背番号の大物ばかりである。
ついに雨が降り出し、傘の無い筆者は入口に戻って避難。いよいよ本降りになってしまい、グッズ売り場のテントで震えながら雨宿りだ。もちろんこの日予定されていた紅白戦は中止、一軍選手は姿も見せぬまま、どうやら近くの「オビスギドーム」とかいう場所に移って練習するという噂である。
それにしても筆者、九州では天気に縁がない。昨日の晴天はまぐれだったのだろうか。前回の九州では3日間の旅行が3日間とも大雨洪水警報だった。今回はそのリベンジの意味でも傘を持って来なかったのだが、この土砂降りでは身動きひとつ取れず、結局10時過ぎまでテントの下にいた。ほんの少し小降りになったのを見計らってようやく脱出、油津駅まで走り、濡れついでにそのまま「直ちゃんラーメン」まで走って入店した。直ちゃんラーメンは主人がカープの大ファンということで、カープの選手やOBまでも通う店らしい。店にはサインやらが貼ってあってごちゃごちゃしているのをイメージしていたのだが、内装は小ぎれいな感じで、いたって普通の店だ。ラーメンとチャーハンのセットを注文したが、ラーメンもチャーハンも普通に美味しかった。もう少し客がいてカープ談義に花が咲いたりすると、より美味しくいただけるかもしれない。料理は雰囲気も大切だ。とはいえ、自分からカープの話題を振る勇気もなく(一夜漬けなもんで)、スゴスゴと店を出た。
一軍の練習を見に行くかどうか迷ったが、かなり戦意喪失してしまったため明日にかけることにし、とりあえず本日の宿泊所である日南第一ホテル方面を目指すことにした。直ちゃんラーメンからはまた走り、交差点のコンビニへ。雨がやむまでここで立ち読みである。小降りになったので外に出るとまた土砂降り。このパターンはもう自分が雨男だと気付いた頃からの得意技なので、諦めて土砂降りの中を走った。
ホテルは案外簡単に見付かったが、まだチェックインの時刻には早かったので、どこかで暇潰しだ。とその時、ホテルの隣に「風来軒」という筆者が宮崎で一番行きたかったラーメン屋があるのに気付き、「らりほ~♪」と鼻歌まじりに入店。天気は最悪だが、ラ運はまだまだ錆び付いてはいないようだ。ここのラーメンはこってり系。博多よりも麺は太めで、スープはより濃厚な感じである。ついでに注文したギョーザもまあまあ。一瞬にして食べ尽くしてしまった。もう少し時間を潰す予定だったが、食べ終わっては仕方が無い。道の向こうに本屋が見えたので、またそこまでダッシュした。それにしてもよく降る。天気予報では朝降ってやむような感じだったが、とどまる気配がない。少し早いが、ホテルに行ってみることにした。

こんなに近付けて良いのか!?広島カープ宿舎!

第一ホテルのフロントに「まだ早いもんで」と一蹴されたため、ロビーで新聞を読んでいると、ユニフォーム姿の男が登場した。背番号6、浅井だ!色紙は5枚しかないので、浅井ごときで無駄遣いは出来ぬ(すまん、浅井)。それにしても、浅井クラスがもうホテルでウロウロしているということは、主力選手は戻ってもう部屋に入ってしまったのだろうか。あたりを見回すと、ホテルの玄関に若者が立っているのが見えた。声を掛けてみると予想どおりカープファンで、サイン目当てに張っているとのこと。彼は岡山からわざわざ車で来たらしく(筆者もわざわざ横浜から来てんだけど)、彼が持っているユニフォームには既に10人ほどのサインが書かれているのが見える。それにしても、立っているのはこの男とカープファンを装った挙動不審な筆者の2人だけ。サインをもらうにはベストポジションだと思うのだが、皆さんこのホテルをご存知ないのか、それとも遠慮なさっているのか、あるいは本当に人気が無いのか。
岡山君(勝手に命名)はもうほとんどの選手のサインを所有しているらしく、「もう部屋に飾る場所がないんです」と言っていた。しかし「前田のサインだけはどうしてももらえなくて、もう諦めました。前田は嫌いです」と言っていた。妥協して結婚し、普通に幸せに暮らすタイプとみた(筆者は崖っぷちの一輪の花を取りに行くタイプで砂)。
彼によると、やはり主力選手はもう部屋に入ってしまい、残るは若手だけということだった。どちらかというと若手狙いの筆者にとってはむしろ好都合だ。
しばらく立っていると、1台のタクシーが入って来た。降りた男を見て、度肝を抜かれた。「で、でけぇ!」。なんと、サイン5枚のノルマにおける最重要人物、新井選手の登場である!事前の協議により、新井のサインゲットで「うのっちに『けん君』と呼んでもらえる権」を獲得できる約束を取り付けていた筆者、岡山君を押しのけ「サインくださいっ!」と叫んで走っていた。新井選手は「大きく書いて良いですか?」と言い、サラサラとサインしてくださった。なかなかの好青年だ。
いきなりのノルマ(の一部)達成で肩の荷が降りた筆者、後続のタクシーから降りてきた天谷・尾形両選手のサインも難なくゲット。新人が帰って来たということは、そろそろおしまいである。その時、ホテルの中から良い体つきの青年が出てきて、自転車に乗って「森笠に先に行ったって伝えといて~」とホテルマンに言い残して去っていった。岡山君はそれを見届けた後に「前田、自転車乗ってどこ行くんだろ?」と言っている。「ま、前田!?」。筆者は全然気付かなかったが、言われてみれば前田顔だ。あまりにもそこらのにいちゃん風私服だったので、気付かなかった。っていうか岡山君、諦めているとはいえ、言うの遅い。千載一遇のチャンスを逃し、戦意を失った筆者はチェックインすることに決めた。
ところで岡山君はまだ粘っているようだったので誰目当てか聞いてみると「ピッチャーのサインが欲しいんだけど」と言っていた。うのっち情報では確か、投手陣は別ホテルのはず。それを彼に伝えるとどうやら知らなかったようで、スゴスゴと退散していった。まだまだ修行の足りない岡山君である。
筆者の部屋は628号室。部屋は普通のビジネスホテルという感じだが、6階ということで多少見晴らしは良い。海は近いが、残念ながらオーシャンビューではない。「とりあえずビールでも飲みますか」ということで、部屋を出た時に気がついた。隣の部屋の前に「新井25」と書かれた洗濯カゴが置いてあるのだ。も、もしや?早速うのっちに報告すると、「うひょ~、帰って来たら教えて~!」などと言っている。教えてどうなるものかわからないが、気持ちはわかろうというものだ。特に興味の無い筆者でさえ、隣が新井となればなんとなく変な気持ちになる。何かを買いに行くフリをして部屋をむやみに出入りしたが、残念ながら部屋の前で新井選手に会うことはなかった。ずっとテレビの音は聞こえていたが、物音がしなかったところをみると、おそらくお出掛けだったものと思われる。
いつの間にか雨もあがり、陽が差してきた。明日は期待できそうだ。夕飯はちょっとリッチに宮崎牛を食べようと思い、外に出た。入口にあった野村自転車(「のむら7」と大きく書かれており、他の人が使うには少々恐縮な仕様になっています)もいなくなっており、もしかしたらみんなでどこかへ行ったのかもしれない。
ホテルから歩って10分ぐらいのところに「とむら」という焼肉・ステーキの店があり、一人では少し気が引けるが、旅の恥は掻き捨てとばかりに入っていった。宮崎牛は柔らかく、最高。大満足である。ビールを買ってホテルに戻ったら、野村自転車が戻っていた。選手の門限は22:30ということだが、先日木村選手が門限を破って事件を起こしたこともあって、全員少し自粛ムードなのだろうか。部屋に戻って隣の洗濯カゴを見ると、丸めた靴下が投入されていた。どうやらお戻りの様子である。「靴下ぐらい持って行っても怒らないかなー」などと変な考えも脳裏をよぎったが、立派な犯罪(下着ドロと同じ刑罰かしら)なので、やめておいた。大雨ながらもいろいろと事件満載の一日がやっと終わり、就寝となった。

やっとキャンプ視察!

もう最終日がやってきた。この日は7時に起床し、準備をして8時に部屋を出た。800円で1階のレストラン「キャンドル」の朝食バイキングがいただけるということで、注文。誰か選手がいるかと期待したが、PRESSのおっさんが1人食べているだけだった。ここでは注文時に洋食か和食を選択し、洋食を選んだ筆者にはベーコンエッグ・トースト・サラダが付いてきた。そして並んでいる品々を各自で取ってくる食べ放題方式だが、品々という割には3品ぐらいしか無く、少し淋しいバイキングだった。とはいえ、筆者の好きなマカロニやすき焼き、それにほうれんそうと卵の炒め物もあって(っていうかその3品)、十分満足だ。
食べ終わってロビーにいると山本浩二監督が現れ、PRESSの人と「丸山勝った?負けたのか。惜しかったなー」とゴルフの話をしていた。少しはカープの心配をしていただきたい。
その後、緒方などの大物選手が相次いで登場し、タクシーやホテルの車で次々と練習場へ向かっていった。野村が現れた時にサインをもらおうとダッシュしたが、少し出足が遅れ、先に車に乗られてしまった(ごめんようのっち)。
結局朝は何の収穫もなく終わったが、ふとあることに気が付いた。「前田の姿を見ていないっ」。もしかしたら筆者がゴハンを食べている間に早くも行ってしまったのかもしれないが、出て来る方に賭けて待ってみることにした。最後の選手が行ってから30分以上経過し、そろそろ諦めて移動しようと思ったその時、ついに前田が姿を現した。満を持して「サインくださいっ」と迫ったが、前田は首を少し横に振っただけで車に乗り込み、行ってしまった。噂には聞いていたが、固きこと美濃囲いのごとし、難攻不落である。
淋しく天福球場へ向かった。この日は雲ひとつ無い晴天だが、風が強く、寒い。そんな中、平日だというのに観客がみるみるうちに増え、軽く数えただけでも100人を超えていた(後で聞いた話では500人もいたらしい。みんな仕事は?)。10時からアップが始まり、まずはフリー打撃とティー打撃。前田・野村・緒方の3者揃い踏みは圧巻である。隅っこでは新井がバント練習をしていたが、へっぴり腰でかなり笑える(まあ実際にやる場面は少ないと思うけど)。その後は守備練習。やはりプロは凄い。アマチュアとの違いはなんといってもスローイングで、取ってから投げるまでの動作の早さと正確さは、仮にも野球をやっていた筆者にとって、目を見張るものだった。これでもなかなか優勝出来ないというのだから、プロの世界とは恐れ入る(がんばれカープ)。特に目を引いたのはショートを守っていた新人の尾形。何と言っても肩が素晴らしい。これはサインをもらっておいて正解であったろうと思う。
どうやら昨日流れた紅白戦をこの日やるとのことで、超ラッキーだ。中心選手はあまり出ないようだが、白組に天谷、紅組に新井・尾形と、昨日のサイン組も出るようで楽しみである。天谷選手は初球を打ってレフトフライ、デッドボールを食らって「オオゥ」と叫んで退場したラロッカの代走に出て果敢に盗塁を試みるも失敗、新井の打球の目測を誤ってバンザイと出だしは今ひとつだったが、センター前の当りをダイビングキャッチで好捕するなど元気なところを見せた。尾形選手も三振・内野ゴロと良いところは無かったが、内野ゴロでも間一髪アウトといった感じで、ヒットを量産しそうな雰囲気である。新井選手はいきなり天谷の頭上超え三塁打を放ち、さすがといったところ。その他では、東出が三塁前のセーフティバントを含む2安打で三村ヘッドに褒められていたのが印象的。また、レギュラー定着を狙う浅井も全打席出塁と、首脳陣にアピールしていた。
投手陣では、大竹選手が乱調で無死から3四死球でピンチを背負うも、後続をダブルプレーに取るなど粘り強いところを見せた。リベンジに燃える河内は今ひとつピリッとしない内容で、どのような裁きがあるかビミョーなところ。抑え候補の永川も打たれ、まだまだこれからといった感じである。

まさか!アノお方のサインをゲット!

紅白戦は6回で終わり、筆者はあと2枚の色紙を誰かで埋めるため、出入り口で張り込むことにした。山本監督などは出てきたが、若手はまだ練習をやっているのか、なかなか出てこない。とりあえず木村拓也のサインでももらってラーメン食べて帰ろうと思っていたのだが、17:19の列車30分前になっても誰も出て来ないので、ラーメンは苦しくなってきた。どうやら他の出入り口から若手選手が自転車に乗って出て来たようで、待っていたファンは走ってそちらに行ってしまった。筆者はどうしたものか迷って躊躇し、キョロキョロしていたその瞬間、張っていた出入り口に停まった車に誰か選手が乗るのが見えた。木村か?と思い、車内を覗いて、びっくり仰天。前田である!試合にも出ていなかったし、特に姿も見なかったのだが、まだ球場にいたとは。誰かを待っているのかドアを閉めるそぶりが無かったので、思い切ってサインペンを差し出すと、なんとなんと、あの前田様が、目の前でサインをしてくださったのである!!まさに、奇跡が起きた瞬間だ。「ありがとうございましたっ」と、普段が「ド」だったら「ソ」ぐらいのうわずった声でお礼を言い、ふるふると余韻に浸る筆者。新井の時は「うのっちに内緒にしとこ」と思ったが、今回はさすがに居ても立ってもいられず、速攻でご報告メールを打つ筆者だが、感動のあまり涙があふれ、待ち受け画面もよく見えないのであった。
もう木村などどうでもよい。筆者の使命は、前田様を含む4枚のサインを無事横浜まで持ち帰ることだけだ。普段から変な場面で悪運を使っているような気がする筆者だが、今回はまさに、全ての運を一点に注ぎ込んだ気がしてならなかった。運はもうほとんど残っていまい。筆者は慎重に油津駅へ向かい、最後の力を振り絞り、なんとか無事に17:19の列車・宮崎空港行きの列車と乗り継ぎ、飛行場に到達した。逃したラーメンの替わりにどこかで食事をしようと思ったが、宮崎空港は店の数が圧倒的に少なく、どこも長蛇の列。そんな中で冴えない「洋風居酒屋」のカウンター席が1つだけ空いていたので、もぐり込んでビールとつまみを注文。ついでに宮崎牛のステーキも注文したが、全く美味しくなかった。帰りのジャンボ機はガラガラで、窓際の席が取れたのはもちろん、隣も後ろも誰もいない。洋風居酒屋の口直しにスープをおかわりし、22時過ぎに羽田到着、京急で横浜に着いたのは23時過ぎであった。

サイン贈呈!

今回の旅は、福岡のラーメン・宮崎のキャンプという変則2本立てで、計画の途中からどうなることかと懸念されたが、いざ蓋を開けてみたら大変面白い出来事ばかりで、楽しい思い出が出来た。まずはいろいろ情報をくださったうのっちに感謝したい。第一ホテルの予約が出来たことに始まり、新井選手のサインがすぐ手に入ったこと、隣の部屋が新井選手だったこと、前田に一度断られながらもサインを入手出来たこと、雨で流れたにもかかわらず紅白戦を見ることが出来たことなど、本当にラッキーなことが続き、今後の人生どうなっちゃうのかしらん?と不安になるほどであった。
サインは無事うのっちに贈呈し、宇野家に飾られることになった。うのっちが少しでも喜んでくれれば、がんばって行った甲斐がある。筆者が言うまでもないとは思うが、ファンを続ける限り、大事にして欲しい。そして、嫁に行ってしまっても、サインを見て少しは筆者の事を思い出してくれれば、それでよし。 おわり。