「4大コワいもの」といえば一般に「地震・雷・火事・オヤジ」ですが、それはもう今は昔の話です。現在はどちらかといえば「地震・雷・火事・ねえさん」といった有り様で、怒ると手をつけられないのがねえさんなのです。 さて今回登場するのは「ナゴンちゃん」こと清少納言です。ナゴンちゃんは言うまでもなく「枕草子」で大ブレイクした超有名随筆ウーマンなのですが、歌人としてもその才能を発揮しています。 ある晩恋人と幸せな時を過ごしていたナゴンちゃんですが、その殿方が「そろそろ帰ろっかなー」と言い出しました。「なんで?」と問い詰めるナゴンちゃんに、彼は「いや、もういい時間だし。ほら、一番鶏の鳴く声が聞こえないかい?」と適当なことを言っています。 それでついにキレてしまったナゴンちゃんの放った一句が次のものです。 「夜をこめて鶏の空音ははかるとも よに逢坂の関はゆるさじ」 おお~こわい。「夜はもうすっかり更けてしまいましたが、あなたが鶏の鳴き声をいくら真似ても、逢坂の関の番人である私を騙して通って帰ることなどできませんよ!」といったような意味です。ナゴンちゃんはなんとな~くプライドも高そうなので、なかなか機嫌を直してくれそうにないですね。 ちなみにナゴンちゃん、様々な殿方からラブレターをもらったようですが、そのほとんどは「こんなヘタな歌では、私の心を動かすことはできなくってよ。」と門前払いにしたそうな。こわい~。 次に怒っているのは、赤染衛門です。 ある日、衛門ちゃんの妹がある殿方から「今夜逢いに行きます」という手紙をもらって幸せそうにしていました。衛門ちゃんは「あの方にはたくさんの恋人がいると聞くし、本当に来てくださるかしら?」と疑問に思っていましたが、その予感は的中し、その殿方は結局来なかったのです。 落胆して涙にくれる妹を見た衛門ちゃん、「あのオトコ、許すまじ!」とキレてしまいました。そしてその殿方に送った歌が次のものです。 「やすらはで寝なましものを小夜ふけて かたぶくまでの月を見しかな」 おそろしや。「来てくださるなどとおっしゃらなければ寝てしまったものを、あなたを待っていたおかげで夜も更けて西の空に傾いてしまった月までも見てしまいましたよ。あなたのせいで!」といった意味です。 妹がそこまで怒っていたかどうかはわかりませんが、怒った姉はそれを殿方に送ってしまいました。怒ったねえさんは手が付けられません。 その後、その殿方が改心して会いに来たか、あるいは愛想をつかしたかどうかはわかりません。どっちにしても、女性は怒らせないことですな。みなさん気をつけましょう。私も気をつけます。 |