戻る



みちのく北海道



出張旅費でみちのくへ!

寒い時季になると、北国が恋しくなる。なぜだろう。日本は基本的に仏教の国であり、昔から断食などの苦行を経て悟りを開こうという者が多い。父親が熊本県民・母親が知多市民という生っ粋の日本国民である筆者もそのごたぶんにもれず、どうやら冬は寒い地域に自分の身を置きたがるようである。
そんなわけかどうかは知らぬが、今年の初冬も北を目指すことになった。もはや毎年恒例となった「みちのく一人旅」である。思い起こせば昨年の12月は「日本を知らずに海外なんぞに行けるかー!」ということでなぜか47都道府県全制覇に躍起となり、ハワイ旅立ちの一週間前に46・47番目の青森・秋田上陸を果たしたのだった。その時は結局行きたいスポットにほとんど行けず(「秋田と青森に行く」だけが目的だったもんで)、涙ながらに帰還したため、今回はそのリベンジでなのである。
まず最初に立てた計画はこうだ。前回「駅に降り立ちて深呼吸をする」というセコ技に終わってご無礼した秋田県をメインに置き、田沢湖・角館・きりたんぽ等をまわるのが有力視されていた。11/5・6の月火に有休を取れたので、「11/2(金)夜に夜行列車で秋田入りし、適当にまわって帰る」と決定。
ところが、その計画決定直後に事件が勃発。何とあろうことか、11/2(金)に東京出張が入ってしまったのである。なんと嬉しい誤算!!伊賀と東京の往復旅費は25,000円ぐらいであろうか。ということは、伊賀から東北のどっかまでの片道運賃が丸々浮いてしまう勢いだ。東京からみちのくに向かうとすれば、秋田にはちょっと行きにくい。秋田新幹線などを使えば簡単に行けるが、筆者が新幹線など使おうはずがない。悩んだ結果、青森県を中心に攻めることに決定(ごめん秋田県)。
東京から青森までは寝台特急北斗星・はくつるなど行き方はいろいろあるが、お値打ちかつ良い時刻(早朝)に着く素晴らしい乗り物を発見した。東京駅から青森駅まで走る「夜行バス」であった。出張が終わって東京駅を21:30に出発し、青森着が7:00。青森の朝市でごはんを食べて行動開始するには最適だ。青森ではレンタカーを借りていろいろまわることに。その後はいつもどおり海峡を越えて(潜って)北海道入りし、ラーメン三昧の後飛行機で帰るというプランが出来あがった。

仕事もします!

11/1(木)東京出張前日。筆者は何げに「上野市から品川までの夜行バス『いが号』」を予約していた。冷静に考えると翌日も青森まで高速バスが待っている。無謀だ。若さゆえの過ちといえよう。上野産業会館を22:20に出発する。木曜日ということもあって乗車率は半分以下だが、週末や東京からの下り便は満席になるそうである。「いが号」は品川まで7,500円ほど。新幹線などを使うより5,000円は安い上、出張旅費までゲットできるとは大儲けだ。バスではなかなか眠れないが、ウトウトし始めた頃品川に到着。
品川到着は6:00頃のため、そこからの時間のツブし方に手腕が問われる。筆者は「宮城湯」という銭湯を発見し、そこで業務開始の10:30までのんびりすることにした。宮城湯はなかなか使える。東京なのに、一応「温泉」なのである。どうやら西品川温泉という名称らしい。しかも東京なのに、露天風呂付き!なんと素晴らしい。普段はカラスの行水程度の筆者も、この日ばかりはのんびり入浴。今後も何かあれば使ってしまいそうなスポットである。
出張の業務とその後の懇親会も無事終了、東京駅八重洲口出発の高速バス乗り場へ向かう。「青森くんだりまで行く人なんて、自分以外おるんかいな~」と思っていたが、とんでもない。あまりの人の多さに増発に次ぐ増発、結局バスは4台も出たのである!みんな何しに青森まで行くのだろう。謎だ。前日のいが号であまり眠れなかった&懇親会でハッスルしたこともあって爆睡できると思ったら大間違い、どうやら筆者は細やかな神経の持ち主らしく、今宵もウトウト程度で青森着を果たした。ちなみに東京-青森間は10,190円。超お値打ちと言わざるを得ない。

憧れの恐山!

予定より少々早い6:30に青森駅に立つ筆者。レンタカー営業所が8:00からなので、朝市でごはんを食べて丁度良い。筆者御用達の市場団地は「AUGA」という百貨店の地下にまるごと移転しており、魚市場・寿司屋など、朝5時から活気あふれる営業をしているもよう。市場団地内の行きつけの店「市場食堂」に行き、景気付けに「いくら丼」を注文。店のおばちゃんの愛想はイマイチだが、味は良い。朝も早よからカウンターは満席。筆者のリサーチによると、どうやら「中落ち丼」というマグロの中落ちを使ったドンブリが人気のようだ。今度来たらコレにしてみようと思う筆者である。
隣に座った女の子がしきりに地図を眺めていたので聞くと、どうやら札幌から秋田に向かう途中で青森に寄ったということらしい。旅先ではこういう何気ない出会い・会話が面白くて仕方がない。時間が来たので(女の子とは何事もなく)レンタカー屋に行くと、筆者の2日間の相棒「ビッツ」が待ち構えていた。
この日の予定は、恐山まで行って十和田湖に帰ってくるといういきなりの強行軍だ。あいにくの天気の中、ビッツは北へ北へと走る。青森は市内でもそれほど交通量が多くない(道も広い)ため、快調である。下北半島に入ると益々快調に。「恐山」と書いてある標識のキロ数表示がぐんぐん減ってゆく。「下北にも慣れた~♪」などとシモキタ違いの歌を口ずさみつつ、ついに恐山麓に差し掛かる。どうやらこの日は「恐山駅伝大会」という地元民お待ちかねの大会があるらしく、山を走っているジャージ姿のオッサンが多くて危なっかしい。
昼前に恐山に到着した。車から出ると、火山独特の硫黄の匂いが立ち込めていた。雨もポツポツ降っており、「硫黄の雨ってことは、やっぱり酸性雨なのかしら?」と髪の毛を心配しつつ門まで進む。「開山は10月まで」と書いてありドキッとしたが、門の隣の通用門風のところが開いていたのでこっそり侵入。夢にまで見た恐山(なんで?)の光景が目に飛び込んでくる。秋の植物の淋しさが、閑散とした風景にマッチしている。恐山は日本でも有数の霊山で、詳しくはよくわからないが、死者の霊を供養したりする場所らしい。地面に無数の風車がクルクルと回っており、哀愁をそそる。少し登ったところにある湖や紅葉が大変美しく、恐山の淋しさと対照的で妙な感覚を覚えた。残念ながら「イタコ」はいなかった。いたら口寄せをやってもらおうと思っていたのに(口寄せ料は3,000円ぐらいらしい)。

十和田湖へ激走!

日本で一番行きたい場所ナンバーワンだった恐山(なんで?)をついに征服し、満足な筆者である。恐山から少し山の方にドライブすると、奥薬研温泉という秘境が存在する。ここの「かっぱの湯」は筆者所有のゲームソフト「みちのく秘湯恋物語」にも登場する有名な温泉で、川沿いの広大な露天風呂・男女混浴・入浴無料という、どれをとっても魅力的な一品だ。脱衣所も申し訳程度のもので、見ようと思えばどこからでも覗き見可能だが、そんなことを気にしている場合ではない。
予想どおり人っこ一人いなかったので入ったり出たり泳いだりしてくつろいでいると、背中に★のマークの入った若者と、カメラ小僧らしきオッサンがやってきた。★マークのドロンパ君は遠くに入ってしまったが、オッサンが近くに入ってきたので話し掛けてみると、どうやら函館からやってきた旅人らしかった。このあたりにも詳しいらしく、「下北に来たら絶対半島一周するべき!眺めが最高なんだから。函館行ったらウチがやっているソバ屋に寄ってみて」と、いろいろ教えてくれた。筆者はこのまま十和田湖に向かう予定だったのだが、その言葉(ソバ屋は知らんけど)を聞いて計画変更。風呂をあがると、すぐさま本州最北端の大間岬へと向かうのであった。
小一時間で大間に到着。天気はイマイチだが、海の向こうに北海道(らしき陸地)が見えて嬉しい。残念ながら時間がないのですぐさま出発、そのまま南下して仏ヶ浦を通り、元の道に戻って下北半島を脱出。わき目も振らずに十和田湖に向かう。十和田湖近辺は朝昼は美しいのだろうけど、夜は不気味でめちゃくちゃ怖い。本当にわき目も振らずにワインディングロードを進む。ところがここで事件発生。宿泊場所に電話を掛けてもつながらないのである!これでは正確な場所もわからない。実は、十和田湖では国民宿舎をとってあったのだが、「国民宿舎とわだ」「国民宿舎十和田湖」と2種類存在し、筆者が電話を掛けていたのは休業中の前者、宿泊地は後者だったのだ(ややこしい~)。手持ちのるるぶで目を皿のようにして検索した結果前述の事実に気付き、やっとこさ無事チェックイン。コワい山林で夜を明かすという最悪の事態をまぬがれ、ホッと一息である。国民宿舎に泊まるのは初めてだが、「部屋や風呂がホテルほど立派ではないホテル」といった感じ。どこかの合宿所よりはよっぽど快適だ。しかもこの国民宿舎は温泉付き!さらに十和田湖まで徒歩数分という好立地!これで宿泊費3,000円台は超お値打ちである。湖畔には案外多くの飲食店・お土産屋が建ち並び、モスバーガーまであって暮らしには困らない。筆者は焼き肉屋でラーメンを食べ、ビールを飲んで温泉に入って就寝。怒涛のような一日がやっと終了した。2日間バス寝だったので、この日は本当に良く寝た。

奥入瀬渓流散策!

11/4(日)。6時半起床。この日の予定は「奥入瀬渓流散策の後、酢ヶ湯温泉に浸かって青森入り」だが、宿泊した休屋から奥入瀬までは少し距離があるので、国民宿舎に車を置かせてもらって「十和田湖遊覧船で奥入瀬まで行って散策の後バスで戻って来る」プランに決定。遊覧船乗り場までは歩いて数分。全くもって便利な国民宿舎である。それにしても寒い。と思ったら、なんと雪が!!大変なところに来てしまったものだ。
遊覧船は約30分毎に出ており、なかなか便利。休屋から出て戻ってくるコース・休屋と子ノ口(ねのくち)を結ぶコースの2種類あり、筆者は奥入瀬渓流の始点である子ノ口行きの船に乗り込んだ。この船は800人乗りぐらいのまあまあデカいもので、筆者のは「第三八甲田」という名前らしかった。どこから湧いて出てきたのやら、船の中は立ち見も出る超満員。休屋を出て、湖にある中山・御倉の2つの半島や数々の島を巡り、約1時間で子ノ口に至る。ちなみに十和田湖は一般的なカルデラ湖で、湖の中で再度爆発したために2つの半島が出来あがったらしい。水深は日本で第3位、広さは12位。水の透明度はカルデラ湖では5番目で、湖底から温泉が湧いているため年中凍らないのだそうである。
十和田湖には地方にありがちな伝説が残っている。八郎太郎が山に登って川魚を食べた時にえらくノドが乾き、川の水を堰き止めてゴクゴク飲んでいるうちにいつのまにか十和田湖が出来たそうである(さっき爆発で出来たって誰か言ってなかった?)。南祖の坊との主争いに敗れた八郎太郎は、現在の秋田県八郎潟に逃げ込んだということじゃ。
子ノ口から焼山までの14kmが奥入瀬渓流である。奥入瀬渓流は年中水かさが同じで、いくら水不足になっても滝の水が涸れることはないそうである。謎だ。歩って行くとさすがに日が暮れそうなので、レンタサイクルをゲット。おばちゃんに「100円で軍手もあるよ~」と言われたが、買って正解!!道は全て下り坂でトバせるため、手が冷たいのだ。奥入瀬渓流は素晴らしかった。紅葉もまだ残っており、良い感じである。1ヶ所、川の中に道路標識が立っている場所があった。ちょうどカーブの標識なのだが、昔道路だったところが台風で川になってしまったところらしく、面白い。焼山まではあっと言う間に到着。レンタサイクルは無料で乗り捨て可能なところも便利だ。
国民宿舎まではバスで戻るのだが、少し時間があったので「弁当コンクール日本一」という八戸の「小唄弁当」を購入。酢メシに鮭とシメサバがのっており、美味。ついでに十和田牛乳を飲んで(100円)バスに乗車した。見た目は普通のバスだが一応観光用で、ガイドさんが「あれが銚子大滝でごじゃいまぁす」とやっている。「昨日の夜のコワい場所はこういう景色だったのかー」という感想の中、バスは休屋に到着。
十和田湖といえば、「乙女の像」を見ずにはいられない。高村光太郎作の、2人の女性が手を合わせて立っているアレだ(モデルは智恵子さんらしい)。早速マネしてポーズを決めている女子がいたりして面白いが、寒いのでちゃっちゃと退散。久しぶりに愛車のビッツに乗り込み、出発である。

これまた憧れの竜飛岬!

十和田湖では少々時間が押してしまったので、残念ながら酢ヶ湯温泉は諦めて弘前市へ向かう。弘前市は意外なラーメン処らしく、侮れない。左手に大きな岩木山が見えてくると「お岩木ぃ山ぁでぇ~♪」と歌わずにはいられない。弘前では、老舗の「来々軒」に決定。素朴な味で、美味。守り続けて欲しい一品だ。そして弘前ではもう一ヶ所寄りたい場所があった。「津軽そば」の店である。今や幻を言われている津軽そば。どうやら製法が難しいらしく、作る人がいないのだ。そんな津軽そばを求めて、弘前城のお堀横にある「野の庵」に潜入。「のの庵」とはまた筆者の行きたくなりそうな名前ではないか。ここは一人変な格好で入るのを躊躇してしまうほど由緒正しそうな老舗。津軽そばはソバ粉十割で、あったかいソバでいただく。筆者は鴨南そばを注文。あまりソバの味のわからない筆者(っていうかソバ以外でもあまりわかっていない)だが、さすがに旨いと感じた。これも守り続けて欲しい一品といえよう。
野の庵を出たのが15時。レンタカーを返す期限が19時だ。実は津軽半島の先っぽ「竜飛岬」に行ってみたいと思う筆者なのだが、4時間で行って青森まで帰れるかはビミョーだった。しかし、こんなチャンスは滅多にない。筆者は北に向かってアクセルを踏んだ。五所川原を越えてからは筆者の目論見どおり車の数が激減。右手にはあの「津軽鉄道」の一両列車が走っている。なんとのどかなことか。竜飛岬まで平坦な道が続くと思ったら大間違い。ものスゴイ山道に突入した。あたりはもう暗くなってきており、昨日の十和田湖と同じような怖さにおののきながら只管北を目指す。なにせ対向車もこっち側も誰もいないのだから、「このまま行ってしまっていいのかしら」という不安が押し寄せる。怖くて怖くて「もうだめ~」という直前で、山の上にある竜飛岬の灯台に到着。風力発電の風車がライトアップされているが、サービスのつもりかも知れないけど怖さ倍増だ。
ところで、前日恐山に行ったことで「行きたい場所ナンバーワン」に踊り出た場所が竜飛岬の「階段国道」であった。その名のとおり、階段の国道なのである。階段の国道は日本でも唯一ここだけらしく、昔国道の登録をする人が現地を見ずに地図だけで国道の指定をしてしまい、うっかり階段が国道(339号線)になってしまったのだそうだ。筆者はこういう「日本で唯一」とか「最○端」とかいう文句に弱く、階段国道もその餌食となった。階段の横にはちゃんと逆三角形の国道標識が立っており、涙をそそる。時間がないので全部を上り下りすることはできなかったが、大満足!こうなればもう帰るのみである。
竜飛岬での時刻が17時。あんなにトバしたのにビミョ~である。青森に帰る道はラッキーなことに平坦なコースだった。あれよあれよと30分も前に青森入りし、ビッツとお別れとなった。それにしてもよく走るし、燃費も良い。最高の車だった。いかに筆者のポル吉君が使えない車であるかが身にしみる。
青森では駅から随分遠いところにある「ハイパーホテル」。ここはまだ新しく、チェックインも自動だし、部屋もキレイだし、素晴らしいホテルだった。しかも値段は5,000円とお手頃。最近こういう「人件費節約によるお値打ち物件」が増えているように思う。夕飯はホテル横の「信夫庵(読み方不明)」というそば屋風居酒屋で一杯やることにした。ここの大将がまた冴えないオヤジで、「この日本酒は青森の地酒なのですか?」と聞いても「ワタシ酒飲めないもんで…。」という情けない答えが返ってくる。その変わり(?)女将はハキハキした人で、「じょっぱりは弘前、田酒は青森ですよ~」と教えてくれた。「日本酒飲み比べ」というメニューがあったのでそれを注文し、良い気分で隣の建物に戻って就寝。

勢い余って函館へ!

「加護ちゃんが野球の試合の応援に来てくれたのにチームは1-2で負けた」という嬉し恥ずかしい夢が終わったところでビミョ~に心地よい目覚め。11/5の始まりだ。この日は青森から函館まで電車で行くだけなので少々余裕がある。ホテルでは無料で朝食(パンとコーヒー)が付いてくる。至れり尽くせりだが、市場団地で朝食を食べたかったのでパン2つで終了(食うのか)。駅までの長い道のりを歩き、先日も入った食堂へ。こないだ人気だった「中落ち丼」を注文。マグロの中落ちでゴハンが見えない。上に玉子の黄身も載って、これは旨かった。しかも1,000円とお値打ちだ。どちらかと言えば、いくら丼よりこちらをおススメしたい。
青森駅に行ってみると、函館行きの快速海峡号が出たばかりで、次の列車が2時間後という最悪の乗り継ぎ。しかしここでめげているようでは、旅を満喫できません。駅近くに街全体や海を見下ろせる展望台があるようなので上ってみた。なかなか良い眺めである。昔青函連絡船として活躍していた八甲田丸もその役目を終え、港に停泊しているのが見える。展望台の下には、有名(?)な三角形の建物「アスパム」へと続く海の上の遊歩道が整備されている。その名も「ラブリッジ」!!「LOVE」と「BRIDGE」を掛け合せたものらしいが、寒い名前だ。それを一人で歩くのはもっと寒いが、みちのく一人旅なのだからやむをえない。横浜の山下公園風(あくまでも「風」)で、なかなかよろしい。夜はイカ漁の漁り火などがキレイであろう。
青森発11:08の函館行き海峡5号に乗り込む。列車での北海道入りはいつも興奮する。津軽半島の10個目のトンネルが青函トンネルだ。海面下240mという魅惑的な場所を通過し、北海道に入る。トンネルを出た瞬間、まわりのおばさん連中が「ワー!」と拍手し出したが、気持ちはわかろうというものだ。しばらくすると終点函館に到着した。

函館ラーメンと温泉三昧!

先日仕事中にラーメンのホームページを見ていたところ、どっかの誰かが「函館のナントカという店がスゴイ。私は東京から2ヶ月に1回ぐらい通っています。」というカキコをしていた。東京から2ヶ月に1回も通わせるほどの店とはいったい!是非調査せねばならぬ。しかし、筆者は店の名前を忘れてしまっていた。こういう時頼りになるのがラーメンの鬼、たけちんである。早速たけちんに連絡すると、すぐに「それは『かもめ』ですな。」という答えが返ってきた。素晴らしい。会社の注文の納期応答より正確で早い。たけちん情報をもとに現地に向かったが、残念なことにこの日は臨時休業。「そこまで調べとけよ~」とたけちんに文句を言いつつ、すぐそばにある「星龍軒」に。ここは小さくて小汚い系のナイスな感じのラーメン屋。函館といえば塩ラーメンだが、ここの塩ラーメンは旨い。主人も良い人そうだ。
「かもめ」の鬱憤を払拭すべく、返す刀でもう一軒。十字街にある「新マメさん」へ。マメさんは都合により一時期姿を消したが、ファンの強い要望でついに新横浜ラーメン博物館にて復活。そして、ご当地函館にも最近復活した老舗なのである。ここの麺にはフノリという海藻が練り込まれており、ヘルシーらしい。塩ラーメンだがスープに背油が浮いているなど、単なるあっさり系ラーメンではない。さすがに旨い。塩ラーメンはくどくないので何杯でもイケそうだが、夜に備えてここでストップ。とりあえず駅前の「プラザホテル」にチェックインする。プラザホテルは駅から歩って数分という好立地。新しくはないが、特に不便もない。函館はどこも3千円台とお値打ちだが、ここは駅前のクセに特に安く、3,300円。言うことナスである。
さて、まずは温泉に。チンチン電車の一日フリー券を購入し、終点の湯の川温泉へ。函館の市電は元々東京の市電を譲り受けたもので、その時の10車両のうち、現在も3車両が現役で走っているそうだ。そして筆者は偶然にもそのうちの一つに乗ることが出来た。チンチン電車というとおり、降りる時に「チーン」と鳴らす音が小気味良い。函館市電の運賃は200~240円。よって、2.5往復以上するのであれば1,000円の一日券がおトクであり、観光客のほとんどはそれを購入しているようだ。湯の川温泉のホテルに入ると入浴料が高いので、ここは庶民らしく「大盛湯」という銭湯に決定。「番台で牛乳飲まなきゃ」と言いたくなるようなコテコテの銭湯で、良い雰囲気だ。ここの温泉は無色透明。匂いも少ない。理由は知らぬが「湯冷めしにくい」のが売りのようである。
銭湯を出ると、もうあたりは真っ暗。「函館+夜=夜景」という勝利の方程式にのっとり、チンチン電車に乗って函館山ロープウェー乗り場に向かう。ここでまたしても事件発生。なんとなんと、ロープウェーが定期点検のため休業中だというのである!!そういえばるるぶに「11月中旬は要注意」と書いてあったのを思い出した。まだ11月序盤なのに、ツイてない。途方に暮れてトボトボ歩いていると、バス停を発見。見ると、ラッキーなことに函館山行き最終バス(18時過ぎなのにもう終バスだ)が5分後に!!筆者は変なところで妙な運を使う。旅行前日の東京出張といい、今回のバスといい、たまに天が味方してくれているようだ。その分他のところでツかないのだが。

函館山へはバスが大穴!

バスに乗ると、普通のバスなのにバスガイドが乗っていた。観光地ではバスガイドを付けるサービスが流行っているのだろうか。バスは337mの山をゆっくり登って行く。対向車とのすれ違いで立ち止まったりする瞬間に麓からの夜景が見えたりして、素晴らしい。天気はビミョ~だったが、夜景に影響ない。過去2度は「大雨」「大雪」で涙を飲んだ函館夜景が、ついに現実のものとなりそうだ。それにしてもこのバスガイドが面白い。車中からの夜景に歓声があがると「こんな一番低いところで喜んでいただけるとは思いませんでした。」、イカ漁の漁り火に歓声があがると「あれは漁り火ではございませんので、指を差したりなさらないでください。」、さらには「さきほどのバスは立ち見の出る超満員でございました。このバスに乗られた皆様は大正解でございます。」などと客を笑わせる。実際、バスはロープウェーの半額ぐらいだし、バスガイドは面白いし、麓の木々の間から見える夜景もオツだし、山頂へは絶対バスで行くべきである。しばらくすると頂上に到着。函館の夜景はナポリ・香港と並ぶ世界三大夜景のひとつに数えられているが、本当に素晴らしかった。一人で見ている者はあまりいないが、一人でも$1,000,000の夜景だ。普段は写真を撮らない筆者もコレばかりは連写。写るんですなのが口惜しい。
山はさすがに寒かった。洗い髪も芯まで冷えたので、もう一度温泉に行くことにした。今度は前にも行ったことのある「谷地頭温泉」。市電の終点からしばらく歩ったところに存在する。ここは立派な施設で、入浴料380円の割には大浴場・大洗い場・小露天風呂まで付いている。お湯は茶色の鉄系で、伊香保や別府鉄輪温泉のお湯に似ている。さっきの湯の川と同じ市内なのになぜこうもお湯が違うのか不思議だ。露天風呂は五稜郭の星形をかたどってあり、見た目にも面白い。十分あったまったところで帰途につく。
帰りの市電に老夫婦が乗っており、どうやら函館駅近辺で美味しい料理屋を探しているらしく、電車の運ちゃんに聞いていた。運ちゃんはあまりわからないようだったので、筆者がるるぶを開いて「ここなどどうでしょう?」と紹介。そろそろJTBに転職を考えねばなるまい。その老夫婦は名古屋からフルムーンの旅行で来たようで、今宵にもう寝台特急北斗星で帰るのだそうだった。その紹介した店がどんなものかはわからないが、諦めて他のものを食べて帰るよりは良いのではなかろうか。
良いことをした後は腹が減る。駅に戻ってから近くのラーメン屋に突入。この店「龍園」は旨かった。さっきからずっと旨い旨いと言っているが、ここは本当に旨い。塩ラーメンのちょっとコッテリ系。チャーシューもやわらかくて絶品。全体のバランスも良い。おススメのラーメン屋である。食べてはいないが、ギョーザなども美味しいようである。食べた後は眠くなる。翌日のプランを考えつつ、就寝した。

札幌でもラーメンです!

とうとう最終日となってしまった。この日も朝から雨である。今まで我慢してきたがついにホテルで傘を購入。後で乗る電車で忘れ去られるまでの15分間、よく働いてくれた。函館といえば朝市だ。雑誌に載っていた「トラピストバターラーメン」が美味しそうだったので「海峡」という店に決めた。行ってみると「麺類はまだ出来ないけど?」と言われた。やむをえず、うに丼を注文。さすがに美味。昔うに嫌いだったのがウソのようだ。
7:20発札幌行きのスーパー北斗に乗り窓を眺めていると、大沼などの景色が大変キレイである。ウトウトしている間に札幌到着。札幌ではもうラーメンしか目的がない。
まずは昔も行って大好きになった「純蓮(すみれ)」。2回目なのにまた迷って、行列を待って食べたミソラーメンは相変わらず最高。この旅で初めてスープを飲み干してしまった。さらにハシゴ。今度はススキノの狸小路を練り歩き、迷った挙げ句に1丁目の「鉄火火の鳥」に入店。ここも昔食べた店だが、旨い!!こんなに旨かった?という感想である。最初は寝ぼけた味がするのだが、食べれば食べるほどうま味が湧いてくる。化学調味料を使っていないというこだわりもイカす。この店は狸小路などに何店舗かあるので、是非おススメしたい。
そういえば前回北海道に来た時は、200円をケチって飛行機に乗り遅れたのだった。今回はそのリベンジ戦というわけで、あえて空港バスにチャレンジ。空港まで通常1時間ちょいのところ、前回は3時間ぐらいかかった(大雪の影響)ため乗り遅れたのを踏まえ、今年は4時間前に札幌駅を出発(リベンジといいながらもかなり引け腰)。結局通常どおり千歳空港に到着してしまい、時間を持て余すハメに陥った。空港はいろんなモノのるつぼ。筆者は居酒屋風の店に入り、小樽ビールに枝豆でかなり粘った。帰りの飛行機は窓側で隣も空いており、スチュワーデスも筆者好みのカワイ子ちゃんだったのでラッキー。無事名古屋到着を果たした。名古屋はまだ半袖でいいぐらいかと思ったら、やっぱり寒かった。
おわり。