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小式部ちゃん、定頼を一蹴!



小式部ちゃんは、あの和泉式部日記で有名な和泉式部の娘であります。和泉式部の娘だから「小式部」です。和泉式部が和歌・文学と様々な功績を挙げているのに対し、小式部ちゃんは特に目立った活躍もなく、この一句のみが残っている程度です。ところがこの一句が凄まじい。
始めて歌合わせに出場することになった小式部ちゃんにある日、ある殿方がからかってこう言いました。「小式部さん。お母さんのところに使いは出しましたか?」。
「何のために使いを出すの?」と不思議がる小式部ちゃんに彼は「だって、今度の歌合わせの歌はお母さんに作ってもらうのでしょう?」と。
怒った小式部ちゃんが瞬時に詠んだのが次の一句です。

「大江山いくのの道の遠ければまだふみもみず天橋立」

まさに奇跡のような一句といえましょう。
「大江山を越えたところにある母のところはとても遠いので、その途中にある天橋立でさえも行ったことがありませんよ。」といった意味になりますが、「踏みもみず」と「文も見ず」が掛詞になっています。
つまり、「言っておきますけど、母に使いを出して手紙をもらって読むなどということはしていませんよ!」という反撃の一句なのです。何が奇跡かと言えば、このような美しい、かつ言葉遊びも入った自分の心境を込めた歌を、ほんの数秒で完成させたことにあります!
結局からかった殿方はあまりの素晴らしい一句におののき、「からかって悪かったよ。ごめん。」とシッポを巻いて逃げたのだそうな。 やったね小式部ちゃん!

小式部ちゃんをからかって返り討ちにあった殿方は藤原定頼でした。定頼も百人一首に歌を残しています。

「朝ぼらけ宇治の川霧絶えだえにあらわれわたる瀬々のあじろ木」

どうやら源氏物語の浮舟と薫のせつない恋をパクったようですが、小式部ちゃんに大口を叩いた割には大したことないですね!