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小町ちゃん、下衆どもには目もくれず!



小野小町といえば、現代でも「赤道小町」とか「赤坂小町」などといったように美しい女性の代名詞に使われるほど、絶世の美女だったと言われています。百人一首の絵札を見ても蝉丸と小町ちゃんは顔を隠しているものが多く、絵描きさんも「小町ちゃんだけは勘弁してくんろ!」というほどのお顔の持ち主なのであります。
神様は小町ちゃんに「美」のみならず歌の才能までもお与えになり、小町ちゃんはいわゆる「六歌仙」のひとりとして歌界でも大活躍。そんな彼女を世の殿方どもが放っておくはずもなく、様々な輩がアタックしては撃沈していったようです。
中でも深草少将(ふかくさのしょうしょう)はかなりお熱で、あまりのしつこさに小町ちゃんはとうとう「では、百の日私のもとに通い続けられたならば、あなたに従うことにいたしましょう」という約束をしてしまったのです。
大喜びの深草少将は言うまでもなく毎日毎日通い続け、とうとう九十九の月日が経ちました。ところが、神はやはり小町ちゃんの味方でした。百日目の晩にとんでもない大雪が降り、深草少将は小町ちゃん邸のすぐそばまで来ていながら雪に埋まって死んだと伝えられています。残念でしたな~。

「花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに」

これが小町ちゃんが百人一首に残した一句であります。「桜の花も、長い雨の中で随分色あせてしまいました。私の美しさも、それをながめている間にすっかり色あせてしまいました。」といった意味になります。さすが小町ちゃん、自分が美しいということにやはり気付いていたようですね。
それにしても、美しい割には彼女はえらく悲観的な女性だったといわれていますが、歌にもそれが伺えますね。
小町ちゃんには浮いた話がほとんどありませんが、ひとつだけ、同じ六歌仙の文屋康秀の三河行脚の誘いに「私は根無草のように、水の流れに沿ってどこへなりともお従いいたします」という意味の返歌を返しています。これが小町ちゃん唯一の男の手掛かりですが、全くもって悲観的であると言わざるを得ません。
結局その三河行脚について行ったという記録もなく、全てが闇のままの絶世の美女なのであります。

実は、小町ちゃんには好きな人がいました。それは、これまた「絶世の美男子」と言われる、在原業平です。参考までに、在原業平も六歌仙の一人として、百人一首にも歌を残しています。

「ちはやぶる神世も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」

とっても情熱的な歌ですが、残念ながら小町ちゃんとの恋物語ではなく、業平が昔付き合っていた高子(たかいこ)と久しぶりに再会した時に、昔の燃えるような恋心を詠んだものです。
「神の住む世界にだって、そんなことは聞いたことがありません。私達の燃えるような恋によって、川の水さえも真っ赤に染め上げてしまうなどということは。。。」といった意味ですね。
絶世の美女と美男子がなぜ結ばれなかったのでしょう。不思議で仕方ありません。それもこれも、全て「神のみぞ知る」といったところでしょうか。