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北海道



ヘナチョコ君。

10年ほど前のトワイライトエクスプレスの車中でヘナチョコ君と出会って散々だったためそれ以来遠ざかっていたのだが、うっかり切符が取れてしまったので久しぶりに乗ってみることとなった。ちなみにヘナチョコ君とは、ご存知の方もいらっしゃると思うが(知らんか)、高知県からわざわざトワイライトエクスプレスに乗車し、札幌からそのまま折り返しの同列車で帰るという変態な鉄っちゃんだが、性格が最悪な上、地元の店で知り合ったフィリピン人を好きになり、そのフィリピーナ嬢が国へ帰ってしまって嘆き悲しんで私に悩みを相談してくるようなヘナチョコ君なのであった。私はその時「列車乗る金があるなら会いに行ったらええがな」と冷たく回答し、それ以来音沙汰が無いので恋の進捗状況についてはわからず、やや残念なのである。
今回は3連休とやや小ぶりな計画だ。列車内で22時間過ごすため、札幌滞在は丸一日程度だが、一日あれば魚やラーメンを堪能出来そうだし、なんせ列車自体が楽しみなので、そのような計画もアリっちゃあナシっちゃあアリである(どっちや)。

敬礼。

列車は大阪駅を昼に出るため、武豊を早朝に出れば十分間に合うのだが、通勤ラッシュを避けて前日マエノリするという優雅な作戦を実行。当日、天下一品ラーメンとたこ焼きでガソリン満タン、意気揚々と大阪駅を目指す。
トワイライトエクスプレスは豪華寝台特急ということでお客さんはもちろん、従業員の間でも一目置かれる存在となっており、列車の入線時には乗務員の方々が列車に向かって深くお辞儀をして迎えることになっており、それを一目見ようと早めに行ったのだが、朝からの暴飲暴食でトイレを優先してしまい、慌ててホームに駆け込んだ時には既に遅し、深緑色の車体を10番線に横たえた後だった。早くも黄昏モード全開、さすがは黄昏特急である(ニセあやや命名)。やむを得ず1人で勝手に敬礼して車内に潜入、今回お世話になる9号車3番下のBコンパートメント寝台に荷物を置き、早速4号車のサロンカーへと歩を進めた。

旅立ち。

11:50、黄昏特急(結構気に入っております)は予定どおり大阪駅を発車。車内にはいい日カニ玉、じゃなかった、いい日旅立ちのメロディが流れ、「トワイライトエクスプレスは、皆様の夢を乗せまして、大阪駅を出発いたしました」というアナウンスを聞くと、旅愁に早くも涙が出そうである(安)。
列車は京都を過ぎて湖西線へ入り、琵琶湖を右手にずんずん進む。ずんずんと言っても、サンダーバードなどの他の速い特急が来ると先に通してしまったりする屈辱的なのこのこ特急なのだが、先を急がないので仕方ないところ。滋賀県の山奥村あたりから、雪が降ってきた。同じ日本国とは思えぬ光景に、胸が躍る。敦賀を越えて北陸本線に入り、雪の日本海をひたすら北上だ。

グッズ購入。

乗務員のおねえさんが、食事の予約状況を確認にやってきた。夕食はかなり豪華で、フランス料理のコースが12k、日本海会席が6k、それぞれ前日までの予約制である。庶民派な私は夕食を予約しておらず、予約しないでも注文できるルームセットという1.5kのものを発注。後で部屋に(といってもコンパートメントなので部屋ではないが)運んでくれるそうである。
その後今度は乗務員のおにいさんが、グッズ販売で回ってきた。トライライトエクスプレスの仕様や運行ルートなどが細かく紹介されている旅のしおりが600円とお値打ちだったので購入、通過する駅まで全て載っている優れものだったため、車窓を眺めるのにかなり重宝だ。
サロンカーはしばらく独占状態だったが、敦賀で乗ってきた16名の団体さんの一部がやってきて、たちまち賑やかになってきた。テレビでは「きな子」という警察犬の訓練所を舞台にした映画がやっており、落ちこぼれの犬が行方不明の子供を奇跡的に探し出すというベタな内容ながら、人目をはばからず号泣(その後、3回観ました)。ネット配信されていたらまた観てしまいそうである。

貸切。

夕方になり、一旦持ち場に戻ろうとして車内を歩っていたら、後ろから名前を呼ばれた。乗務員のおにいさんが夕食のルームセットを丁度運んで来たところであった。注文時におねえさんに名前をお知らせしたのは確かだが、おにいさんには一言も言っておらず、しかもブラブラ歩っていたにも関わらず名前を当てられてしまったのには仰天。やはりプロである。こういう何気無いところでお客さんを喜ばせるサービスは本物だ(もしかして9号車は私だけだったりして)。
最初に荷物を置いて以来のコンパートメントだが、もう新潟県に入ろうというのに他のお客さんが誰もいない。プラチナチケットな黄昏特急だが、やはり人気は個室に集中するのだろうか。
ルームセットは1.5kの割に豪華で、サラダ・米・パン・肉・デザートにコーンポタージュスープまで付いて満腹である。
しばらくは車窓の眺めを楽しんだり、るるぶで北海道の予習をしたりして過ごし、列車は新津駅を発車。新津を出ると、もう北海道の洞爺駅まで止まらない。正確には列車行き違いなどで駅や信号場に止まることはあるが、扉は開かないのだ。ということは、新津駅でお客さんが乗ってこなかったので、我がコンパートメントは貸切が確定、一気に4ベッドの個室という豪華な部屋へとランクアップを果たし、俄然盛り上がってきた(最初から盛り上がっていますけども)。早速荷物を隣のベッドに移し、広いベッドで仮眠である。ちまちまとカーテンを引いて隣を気にしたりしなくて良いのでかなり快適だが、鍵はかからないので、賊の潜入に備えて入口のカーテンは密閉、入口にビールの缶を置いて有事の場合に音がするように涙ぐましい工夫を施す(かなりちまちましていま砂)。

パブタイム。

21時に起床、どうやら山形県あたりを走っているようである。21時から3号車のダイナープレヤデス(食堂車)でパブタイムが始まるようで、早速行ってみた。店のおねえさんによると「赤ワインが断然おすすめ!」とのことなので、赤ワインとチーズの盛り合わせを注文。おねえさんはかなりの酒好きらしく「ワインは白より赤ですよね~」と一人旅の青年に話し掛けてくるため、酒の肴にはもってこいである。
チーズのみで粘りすぎ、良く見たら他のお客さんはいなくなっていたので、部屋に戻ってまた仮眠となった。さっきから仮眠ばかりだが、青森県を過ぎたら青函トンネルが気になってまた起きねばならないため、本眠は無いのである。
北国は雪が激しいらしく、列車は大幅に遅れが出ているもよう。詳しくはわからないが、秋田駅や青森駅ではかなり長い間停車していたようである(仮眠中でも運行状況を把握出来る体になっており、便利です)。

青函トンネル。

青森駅を発車したところで予定どおりまた起床。通常ならば3:40頃に青函トンネル入りのはずだが、既に4時を回っており、やはり遅れが出ているもよう。
最近やらなくなったと噂の車掌による青函トンネル説明会だが、念のため会場のサロンカーに向かってみたが、人っ子ひとりいない。テレビも付いていなく、淋しい限りである。
蟹田駅で乗務員交代となり、一部のクルー以外は入れ替わりとなった。乗ってきた新しい車掌さんが「列車が遅れとって、すみませんね~」と気さくに話しかけてきた。この人、昔青函トンネルの説明をしてくれてめちゃくちゃ面白かった大島さんである!残念ながらやはりこの日は説明会は無いようだが、少しの会話でも楽しかった。是非復活して欲しいものである。
津軽今別駅から数えて10個目のトンネルが青函トンネルだ。何も無いのにこんなにトキめくのはなぜだろうか。53.85kmのトンネルをくぐり抜け、久しぶりの北海道入りを果たす。
まわりはまだ真っ暗だが、朝食の予約を一番早い回にしておいたため、食堂車へ向かった。朝食はベーコンエッグにサラダ、パン数種類などで1.5k。かなり満腹だ。いつの間にか景色が明るくなってきた頃朝食終了、再度サロンカーで美しい大沼公園などの車窓を楽しんだ。さすがに眠くなってウトウトしたが、秘境駅第1位の小幌駅の前後で目が覚め、昭和新山などを眺めているうち、昼前についに札幌到着となった。

聖地巡礼。

普通ならばこの後街へ出かけてラーメンかいくら丼を食べるのであろうが、今回は行くところがあったので駅から出ず、そのまま小樽行きの快速列車に乗り込んだ。言うまでもなく、昔田中れいながDVDで訪れていた鱗友市場へ聖地巡礼なのである!
一面の銀世界を突き進んで小樽駅へ到着。この日も雪がパラパラと降っていたが、傘をさすほどではない。
小樽運河で左折し、運河沿いに10分ほど歩っていくと、早くも目的地周辺となった。鱗友市場内の「のんのん」という店に入店、もちろん田中れいなが訪れた店なのだが、残念ながら田中様がお座りになったと思われる席にはどっかの馬の骨が座っていたため、どいてもらう勇気も無く、仕方なく壁際の椅子に座って小樽丼を注文。小樽丼は5種類ぐらいの魚介類がゴハンの上にのって、かなりの美味であった。
ちなみにれいなはこの店で「北海道の市を全て覚える」という難題クリアのため、店のおばちゃんに読み方を教わりながら勉強していたが、テストでは大方の予想に反して全て回答し、視聴者全員を驚かせたという逸話が残っている。失敗したら罰ゲームで牧場の牛のう○○掃除ということだったので、かなり必死こいたご様子でヲタがっかりなのであった。

ススキノ。

聖地巡礼を終え、小樽に用が無くなったので札幌へとんぼ返り。今宵の宿は中島公園近くだが、道が凍結していてなかなか歩くのに一苦労だ。部屋でサッポロクラシックを飲みながら胃腸を整え(便利な体です)、暗くなってきたところで街へ繰り出すことにした。
まずは旅チャンネルのニッポン百名居酒屋という番組に出てきた「あんぽん」という店に行ってみたが、どうやら休みのようだったので、近くにあったチェーン店らしき春花秋灯という店に入ってみた。時刻が早かったので広い店内に自分1人だったため、店の和服美人がマンツーマンで対応してくれて心地良い。「まだち」という名前だったか、地元の魚が大変美味で、酒もすすむ。
お客さんが増えてきたところで酔っ払ったため、次の店へ。前回も行ったのだが、すみれのススキノ店で一杯(ラーメン)やることにした。ここはすみれのくせにえらい客が少なく、すぐ入店できる便利な店。しかし、本店よりも塩辛い気がするし、ちょっと味が違うような感じである。お客さんは良くご存知だと感心する。
帰りに大通り公園のクリスマスイルミネーションをお一人様で堪能し、宿に戻ってサッポロクラシックで胃腸を整えてから就寝。前日車中泊だったせいか、泥のように眠って翌日の朝となった。
ラーメン。 なんせ黄昏特急が長かったので、もう最終日なのである。この日はリョーマ君が「ラーメンでも食うべ」とメールをしてきたため、札幌駅のラーメン共和国で1杯やってから集合場所の新千歳空港を目指す(我ながら、朝から良く食べま砂)。電話もしないのに出発ロビーで偶然鉢合わせ、久しぶりの再会である。新千歳空港は大規模な改装があったようで、さすが輸入タイルに詳しいリョーマ君は飛行場内の輸入品施工現場をくまなく案内してくれた。特に、アルミナという商品が使われているスイーツ屋はうまくおさまっており、かなりカッコ良かった。せっかく男女2人で会っているのに床や壁ばかり見ているのは職業病なので仕方無いところである(警備員に怒られそうです)。
ラーメン道場でラーメンを食べ、時間までお茶を飲み、ついにセントレアに帰る時がやってきてしまった。リョーマ君に最後まで見送っていただき、長いようで短い北海道旅行は終わりを告げた。
今回は久しぶりのトワイライトエクスプレスだったが、そろそろBコンパートメント以外のA寝台やロイヤルに乗ってみたいものである。そして、1号車スイートは新婚旅行のために取っておかねばならず、予約出来たとしても1人では乗らないのである。はて、一体全体、乗る時は来るのでしょうか。
おわり。